京阪神急行電鉄 京阪合併時代 乗車券

2014年3月22日更新 ERRの略称について説明変更

京阪神急行電鉄合併時代 乗車券
 ここでは、1943年(昭和18年)〜1949年(昭和24年)間の、阪神急行電鉄と京阪電気鉄道(京阪電車)とが合併して出来た京阪神急行電鉄時代に発行された切符について述べます。 当時の鉄道線は、阪神急行電鉄所属の宝塚線、箕面線、神戸線、伊丹線、今津線、甲陽線、北野線と、京阪電気鉄道所属の新京阪線、千里山線(現千里線)、十三線(十三〜淡路)、嵐山線、京阪本線、交野線、宇治線、京津線、石山坂本線が運行されていました。 合併されていたとはいえ、当時は阪急、新京阪、京阪と路線毎に名称が使い分けられており、京阪神急行としての名は定着しなかったそうです(Wikipediaより引用)。

左上:1區券(十三駅発行) 右上:裏面 左下:地紋

昭和21年に十三駅で発行された1區券(1区券)の乗車券です。切符外周に沿って、神戸線と宝塚線の主な駅とその支線が書かれ、発駅に対して 上り・下りを示す「上」「下」記号、神戸線を示す「神」、支線を示す「支」が、それぞれ○で囲まれた記号で書かれています。 左書きで「1區券 金30錢 通用發賣當日限 下車指定駅」の記載があります。
書体は毛筆体です。地紋には「けいはんしんきゅうこう」と右書きで正弦波状に周期的に書かれており、中央には京阪神急行の社章が書かれています。 後に右書きの「けいはんしんきゅうこう」は左書きになりましたが、阪急電鉄と社名変更するまでこの地紋は使われてました。

左:1區券(服部駅発行) 右:裏面

昭和19年に服部駅で発行された1區券(1区券)の乗車券です。切符外周に沿って書かれている駅名がやや大きい書体になっています。 左書きで「1區券 金10錢 用発(発は業の上部分と發の下部分を組み合わせ)賣當日限 下車前無效」の記載があります。

左:5區券(箕面駅発行) 右:裏面

昭和20年に箕面駅で発行された5區券(5区券)の乗車券です。切符外周に沿って、書かれている駅名のうち、夙川と門戸厄神が省略されています。 区数が5区と多いことから他の区間に含まれて無くなったものと推測されます。


伊丹線の駅で発行されたと思われる1區券(1区券)の小児乗車券です。小児券は地紋が赤色になっており、中央に「小兒」の文字が大きく左書きで書かれています。 左書きで「1區券 金5錢 通用發賣當日限 下車前途無效」の記載があります。

左:拾壹區(旧京都駅・現大宮駅発行) 右:裏面

昭和19年に京都駅(現大宮駅)で発行された拾區(10区)の乗車券です。 合併前の京阪電気鉄道のレイアウトが踏襲されており、中央の社章と地紋が京阪神急行電鉄に置き換わっています。 左書きで「拾區 金1圓10錢 税共 用當日限 中下車指定駅」の記載があります。 右上に検札を示す「檢」が○で囲まれた記号で書かれています。また、下部に発行日付を示す数字が漢数字で□で囲まれて書かれています。

左:壹區(桂駅発行) 右:裏面

昭和20年に桂駅で発行された壹區(1区)の乗車券です。切符外周に沿って、新京阪線、千里線、嵐山線、十三線の駅が書かれています。 神戸線、宝塚線などの旧阪神急行電鉄線が書かれていないのが特徴です。 発駅に対して上り・下りを示す「上」「下」記号、検札を示す「檢」が、それぞれ○で囲まれた記号で書かれています。 左書きで「壹區 金10錢 用當日限」の記載があります。書体は神戸・宝塚線とは異なり丸ゴシック体で、地紋は無地です。

左:2區(梅田駅発行) 右:裏面

昭和21年に梅田駅で発行された2區(2区)の乗車券です。 切符外周の下側に沿って、新京阪線、千里線、嵐山線、十三線と梅田駅が書かれており、 「けいはんしんきゅうこう」の地紋入りです。 左書きで「2區 50錢 用當日限 中下車指定駅」の記載があります。


昭和18〜24年に発行されたと思われる貳区乗車券です。発行駅は不明です。左書きで「貳區 金20錢 用當日限」の記載があります。 地紋は「けいはんしんきゅうこう」で、その背景には「2」という白抜き文字と、2区を示す2本の細線が入っています。 上記昭和21年に梅田駅で発行された同じ2区券とデザインが異なっており、阪神急行電鉄に属していた駅で発行された場合には上記乗車券のデザインで、 京阪電気鉄道に属していた駅の場合には本乗車券のデザインが採用されたものと推測されます。

左:叄區(十三駅発行) 右:裏面

昭和19年に十三駅で発行された叄區(3区)の乗車券です。切符外周に沿って、新京阪線、千里線、嵐山線、十三線の駅と梅田駅が書かれています。 旧阪神急行電鉄線においては梅田駅が唯一書かれています。 発駅に対して上り・下りを示す「上」「下」記号、検札を示す「檢」が、それぞれ○で囲まれた記号で書かれています。 左書きで「叄區 金30錢 用當日限 中下車指定駅」の記載があります。 書体は丸ゴシック体で、地紋は無地です。

左:拾叄區(旧京阪京都駅・現大宮駅発行) 右:裏面

昭和20年に旧京阪京都駅(現大宮駅)で発行された拾叄區(13区)の乗車券です。 切符外周の下側に沿って、新京阪線、千里線、嵐山線、十三線と梅田駅が書かれています。 左書きで「拾叄區 金1圓50錢 税共 用當日限 中下車指定駅」の記載があります。文字は赤色で、地紋は無地です。

左:拾叄區(桂駅発行) 右:裏面

昭和20年に桂駅で発行された拾叄區(13区)の乗車券です。 上述の旧京阪京都駅(現大宮駅)で発行された拾叄區(13区)の乗車券とほぼ同一書面で、地紋は「けいはんしんきゆうこう」です。 地紋の背景には、「13」という白抜き文字と、13区を示す1本の太線と3本の細線が入っています。

左:12區(西院駅発行) 右:裏面

昭和24年に西院駅で発行された12區(12区)の乗車券です。 書体が新京阪線で使われていた丸ゴシック体ではなく、神戸・宝塚線で使われていた毛筆体となっています。地紋は「けいはんしんきゆうこう」です。 地紋の背景には「12」の赤文字と、12区を示す2本の太線と2本の細線が入っており、このデザインも神戸・宝塚線に準じたものとなっています。
当時戦後のインフレにより貨幣価値が毎年変わったことから、運賃を記載するところが地紋無しの白抜きになっており、 後で運賃を追加印刷出来るようにしていたものと考えられます。
また、券面のデザインが神戸・宝塚線に準じたものになっているのは、 新京阪線が旧京阪電気鉄道ではなく旧阪神急行電鉄側の路線としての認識に変わりつつあったのではないかと推測されます。


昭和24年に梅田駅で発行された梅田−神戸(現三宮)間の特10區(特10区)の乗車券です。 境界駅の駅名が□で囲まれたタイプではなく、駅名間の記載と表面に発行駅・発行日の○印が押されたタイプになっています。

地紋は「けいはんしんきゆうこう」で、下部に「KEI-HAN-SHINKYUKO」文字が太ゴシック体で記載されています。 また、10区を示す2本の赤い太線が入っています。 券面には上から「特10區」「梅田←→神戸」「金40圓」「用當日限 下車指定駅」が書かれています。


昭和26年に京都(現大宮)駅で発行された天神橋・十三−京都間の特13區(特13区)の乗車券です。 境界駅の駅名が□で囲まれたタイプではなく、駅名間の記載と表面に発行駅・発行日の○印が押されたタイプになっています。

地紋は「けいはんしんきゆうこう」で、下部に「KEI-HAN-SHINKYUKO」文字が太ゴシック体で記載されています。 また、13区を示す2本の赤い太線と3本の赤い細線が入っています。 券面には上から「特13區」「天神橋 十三←→京都」「金60圓」「用當日限 中下車指定駅」が書かれています。 上述の特10区の乗車券との差異は「下車指定駅」に「途中」の文面が付いているかいないかとなります。


参考までに、昭和46年に守口駅で発行された淀屋橋−守口間の乗車券を掲載します。 京阪電気鉄道として独立していた時期ではありますが、合併時代の券面がやや踏襲されています。

京阪との合併を解消した京阪神急行電鉄(現阪急電鉄)ではこの券面とは異なっていることから、 上述の特10区と特13区の乗車券は旧京阪電鉄陣営がデザインしたものと推測されます。

下部の「KEIHAN E.R.R.」の「E.R.R.」部は「Electric Railroad」から取ったものと思われます。 Railroadはアメリカ英語で「鉄道」の意であり、略称はRR又はR.R.になります。参考までにイギリス英語はRailwayとなります。

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