阪神急行電鉄 沿線案内 昭和6年 その1

2009年1月4日更新

@表紙「沿線御案内」
表紙には宝塚駅近辺と思われる風景が描かれています。奥手に見える大きな建物が旧宝塚大劇場と似ていることから、 現在の宝塚市栄町の通称「花のみち」を宝塚駅から東南東方向に見た風景と考えられます。
A地図「梅田〜螢ヶ池(蛍池)・神ア川(神崎川)

[梅田沿線]
梅田には阪急百貨店が描かれており、建屋は2006年(平成18年)まで残存した建物と同じデザインです。 梅田からは神戸・宝塚線と茶屋町・北野までの北野線の3系統が出ていました。
1926年(大正15年)7月4日までは梅田−北野−中津−新淀川(7/2に事前廃止)−十三の1系統で神戸・宝塚線共用でしたが、 同年7月5日の梅田・十三間の高架橋完成時に、神戸線の梅田−中津−十三、宝塚線の梅田−中津−十三、北野線として分離した梅田−茶屋町(7/5開業)−北野の計3系統の線路となりました。
[十三・新京阪線沿線]
十三から淡路までの線が十三線(現京都本線)で、淡路から西吹田(現吹田)千里山までが千里山線(現千里線)、淡路から京都方面に出ているのが新京阪線(現京都本線)です。
省線(鉄道省線の略で、戦前の旧国鉄・現JRの旧称名)が梅田より淡路近辺をクロスし、さらに西吹田と千里山間をクロスしている絵が描かれています。 この線路は現在のJR城東貨物線と似ていますが、本来ならば東海道本線を描くべきであり、また、クロスする位置は西吹田ではなく東吹田(後に吹田に統合)が正しい表記となります。
[神崎川沿線]
神崎川近くに阪神急行電鉄直営「神ア川ゴルフ練習場(現阪急神崎川ゴルフ場)」があります。同ゴルフ場は1931年(昭和6年)開場で、このパンフレットの作成時期を特定する手掛かりとなっています。 近くには園田競馬場もありますが、当時園田駅はありませんでした(同駅は1936年(昭和11年)開業)。
B地図「螢ヶ池〜みのお(箕面)・能勢口(川西能勢口)

[箕面線沿線]
箕面駅は難読であるためか、唯一駅名がひらがなで「みのお」と書かれています。この駅の周辺だけ鮮やかな色調で絵が描かれており、観光地であることを強調しているのが特徴です。 石橋の近くの「浪速高等学校」は大阪大学の前身にあたり、挿絵に描かれている建物は現在の同大学の「イ号館」と思われます。
[能勢沿線]
能勢口(川西能勢口)から一の鳥居を経て能勢妙見までの線と、妙見ケーブルが描かれています。能勢妙見への参拝客を意図した絵となっています。
C地図「花屋敷(雲雀丘花屋敷)〜清荒神・伊丹

[花屋敷沿線]
花屋敷と雲雀丘は、雲雀丘花屋敷として統合される前の駅になります。花屋敷から新花屋敷まで出ている線は「日本無軌道電車」のことで、 日本初のトロリーバスとして開業しました。 なお、本無軌道電車は1932年(昭和7年)に廃止となっており、このパンフレットの配布時期を特定する手掛かりとなっています。
[伊丹沿線]
伊丹より能勢口及び宝塚方面に伸びている線(現在の地図表記ではJRを示す線)は、 阪神急行電鉄が当時開通させようとしていた線で、いずれも未成線で終わっています。
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