JRさくら夙川駅開業
はじめに
 2007年年3月18日に、JR西日本は「さくら夙川」駅を開業した。駅は阪急夙川駅から南東約480m、香櫨園駅から北北東約500mに位置している。阪急・阪神の各駅から近くに位置しているため、阪急・阪神とJRとの間で利用客の奪い合いが起きるのが容易に想像出来る。先手を打って、2006年10月28日のダイヤ改正で阪急は夙川駅に特急などの全ての優等列車を停車させ、同日阪神は香櫨園駅に区間特急(それ以外は全て通過)を停車させた。これは、さくら夙川駅には普通しか停まらないことに対して優位さを出すための対抗策と言える。
 本レポートでは、朝の出勤時間帯に夙川周辺を起点として、商業地域の多い神戸・大阪・京都方面に向かった場合の所要時間と定期運賃に着目して、JR・阪急・阪神・のメリット・デメリットを述べることを目的とする。

JRさくら夙川駅

所要時間・運賃比較
所要時間・運賃比較にあたって、条件は以下のように設定した。
 検索サイト:駅探:乗り換え案内
 時間帯:平日朝の8時頃(朝ラッシュ時間帯)
 経路:JR「さくら夙川→三ノ宮、大阪、京都」、阪急「夙川→三宮、梅田、河原町」、阪神「香櫨園→三宮、梅田」
 結果:所要時間が最小となるものを採用(乗換回数をゼロにするために、普通に乗り続けることはしない)

なお、
 阪神は京都に直接行くことが出来ないため、京都方面を利用した場合の比較表から除いている。
 優位となる項目には、背景をピンク色「」で表示している。
表1 夙川から神戸方面に乗車したときの結果
項目 JR 阪急 阪神
神戸 所要時間 14分 12分 23分
乗換回数 1回 なし 1回
運賃 210円 220円 260円
1ヵ月定期運賃 6300円 8890円 9670円
3ヵ月定期運賃 17950円 25340円 27560円
6ヵ月定期運賃 30240円 48010円 52200円
表2 夙川から大阪方面に乗車したときの結果
項目 JR 阪急 阪神
大阪 所要時間 20分 20分 17分
乗換回数 1回 なし なし
運賃 290円 260円 260円
1ヵ月定期運賃 8820円 9910円 10690円
3ヵ月定期運賃 25140円 28250円 30470円
6ヵ月定期運賃 42340円 53520円 57730円

表3 夙川から京都方面に乗車したときの結果
項目 JR 阪急
京都 所要時間 51分 67分
乗換回数 1回 1回
運賃 890円 510円
1ヵ月定期運賃 26060円(24890円) 17030円
3ヵ月定期運賃 74270円(70930円) 48540円
6ヵ月定期運賃 128520円(119450円) 91970円
※括弧( )内は分割定期の場合
表4 夙川から宝塚方面に乗車したときの結果(番外)
項目 JR 阪急
宝塚 所要時間 37分 23分
乗換回数 1回 1回
運賃 480円 220円
1ヵ月定期運賃 14330円 8100円
3ヵ月定期運賃 40860円 23090円
6ヵ月定期運賃 69550円 43740円


考察
・神戸方面について
 所要時間は阪急の方がJRのより2分早いが、運賃を比較するとJRの方が安価である。時間差が殆どなく、たった10数分の所要時間に対しての乗換回数差も許容出来ることから、「JRの方が優位」と言え、特に三宮以西にも向かうのであればメリットはさらに高くなると言える。

・大阪方面について
 所要時間は阪神が17分と早く、JRと阪急は20分であった。運賃は阪急・阪神の方が安価であるが、定期運賃はJRの方が安価である。乗り換えの手間を考えた場合には、1回で行ける阪急・阪神にメリットがある。運賃重視の定期客の場合には「JRの方が優位」で、利便性重視の場合には「阪急・阪神の方が優位」と言える。

・京都方面について
 所要時間はJRの方が2割も早いが、運賃は7割高く、定期運賃も3〜4割高い。運賃重視の場合には「阪急・阪神の方が優位」で、時間重視の場合には「JRの方が優位」と言える。
総括
 さくら夙川駅の開業によりJRの方が優位となる項目がある以上、阪急・阪神との競争が繰り広げられるだろう。特に、定期客に金銭的なメリットが見込まれるために、一部はJRに流れてしまい、阪急・阪神は苦戦を強いられることが予想される。一方で、さくら夙川駅は阪急と阪神の間にあるのと、1km東側にJR西宮駅があり、乗客を取り込みにくい位置に駅があると言える。JRにとって、阪急より北側、阪神より南側の乗客を如何に取り込むかがポイントとなる。
 阪急・阪神側はダイヤ改正により速達面で対抗策を出しているが、状況次第では価格面でも対抗策を打ち出すことが今後の課題となるだろう。

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